米テキサス州ガーランドで開かれたイベント「ムハンマド絵画展&漫画コンテスト」の会場前で3日夕、男2人が警官に撃たれて死亡した。
ガーランド市の発表によると、2人が乗っていた車の中に爆発物がある可能性があり、爆弾処理班が出動した。周辺の商店などにいた人は避難している。
男2人はイベントの終わりごろに車で会場前に乗り付けて警備員に発砲。警官隊との間で銃撃戦になり、射殺された。警備員も足を撃たれて病院に運ばれたが、容体は分かっていない。(以上、2015年5月4日付CNN報道の引用。)

 この事件について、ジハード主義組織の動向をウォッチしている「SITE」というアメリカのシンクタンクのウェブサイトに、イスラム国の戦闘員を名乗る人物がツイッターで、イスラム国支持者による犯行を示唆したとの記事が配信された。SITEが根拠とするのが、以下のツイートである。

↓事件直後に出されたとされるツイート
テキサス州でのムハンマド風刺画展襲撃事件6

↓事件直前に出されていたとされるツイート。「bay'ah」とは「忠誠」を意味するアラビア語、「Amirul Mu'mineen」は「信徒たちの長」すなわち「カリフ」(=イスラム国のバグダディ指導者)を意味するアラビア語である。更に、「mujahideen」は「ジハード戦士」、「dua」は祈りを意味する。
テキサス州でのムハンマド風刺画展襲撃事件


事件直前の段階で「#Texasattack」というハッシュタグを使っていたことは、事件への関与を疑わせるものの、当該ツイートには事件現場や実行者に関する詳しい情報がない。よって、事前にイスラム国の了解又は関与の下で事件が行われたと断定するには不十分である。今後の続報を待つ必要があろう。

ところが、このSITEの記事を引用する形で、アルジャジーラが、「イスラム国が犯行を認めた」との記事を流した。
テキサス州でのムハンマド風刺画展襲撃事件7
9/11事件後の「対テロ戦争」においては、欧米の報道機関とは一線を画す姿勢でスクープ報道を連発し、世界にその名を轟かせたアルジャジーラであるが、「アラブの春」以降はカタール政府のプロパガンダ機関と成り果て、有能な人材が流出した結果、その凋落ぶりが指摘されて久しい。上記ツイートのみで、「イスラム国が犯行を認めた」とまで報じるのは勇み足であろう。

一方、その他の主要なメディアは5月4日現在、SITEの記事については伝えておらず、状況を静観している。

また、当ブログの管理人がフォローしている、イスラム国の支持者たちでつくるSNSコミュニティーにおいては、当該襲撃を肯定的に評価しながらも、イスラム国からは何ら関連の発表は出ていないという点で一致している。現時点においては、イスラム国の支持者が自発的に行った事件と見るのが妥当であろう。
 
※2015年5月5日追記 
その後の警察の捜査により、事件の実行者の一人が、襲撃直前に上記のツイートを発していたことが明らかになった。また、本事件はイスラム国の指示によるものでないが、実行者はイスラム国に傾倒していたことなどが報じられている。
以下、CNNの続報の引用

米テキサス州の銃撃事件、容疑者の身元判明 ISISに傾倒か

(CNN) 米テキサス州ガーランドで開かれたイスラム教預言者ムハンマドの風刺画イベントの会場前で2人組の男が発砲し、警官に撃たれて死亡した事件で、両容疑者の身元が4日までに判明した。このうち1人は犯行直前、イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」への傾倒をうかがわせる内容を短文投稿サイト「ツイッター」に投稿していた。
(中略)
捜査当局者らは2人の自宅アパートから押収された証拠を通し、犯行に至った経緯を詳しく調べている。シンプソン容疑者のツイートなどから、ISISに影響されてはいたが指示を受けたわけではないとの見方が強まっている。