foresight-fb

国際情報サイト『Foresight(フォーサイト)』内の連載『池内恵の中東通信』にて、当ブログについて言及があった。パリ同時襲撃事件に関し、去る14日にイスラム国が公表した声明の和訳完全版を当ブログ管理人が作成し、公表していたところ、驚くべきことに、東京大学先端科学技術研究センターの池内恵・准教授から、次のようなコメントをいただいた。

・・・14日に公開された、フランスの「イスラーム国」を名乗る勢力による声明文では、「8名」が自爆ベルトと銃で武装して攻撃したと主張している。(声明文は匿名のジハード主義組織分析者によって精密に翻訳されている英訳はインテリジェンス情報会社SiTEによるものが無料で公開されている。SiTEの英訳あるいはニューヨーク・タイムズなどの抄訳で意訳された部分を文字通り日本語訳した部分について、日本の匿名分析者はいたくご立腹である。確かにイスラーム主義者の「美学」を伝えるにはこういった宗教的ディテールは不可欠であるが、全体の意味をとらえるには日本の報道機関による翻訳・抄訳も問題ないレベルではないかと思う。しかしこのような分析者の存在は貴重なので、読者諸賢はどうか暖かく、顧慮の念を込めて見守っていただきたい)【※引用終わり】


「精密に翻訳されている」
 
「このような分析者の存在は貴重


…といった評価にもまして、何よりもありがたかったのが、池内氏が「日本の匿名分析者はいたくご立腹」という箇所のリンクに、例の「立腹」にからんだ記事ではなく、チュニジアのボルドー博物館襲撃事件に関する当ブログの記事をリンクしていただいたことである。

チュニジア内務省の次官が直々に登場し、今年3月に発生したチュニジアでの事件へのイスラム国の関与について、詳細に語るという驚くべき大型テレビ番組があったにも拘わらず、日本国内でこの番組への関心は、当時全くなかったといってよい。日本のマスコミは、大統領や首相といった肩書きを持つ政治家の発言を重んじ、「アンサール・シャリーア」や「ウクバ・イブン・ナーフィア旅団」の実行説を落とし所として、事件報道の幕引きをしてしまった。



当ブログ管理人のような匿名分析者では、いくら隠れた真実や価値ある情報を訴えようとも、おのずと限界がある。池内氏に今回、チュニジアの事件に関する記事へのリンクを張っていただいたことで、すでに埋もれていたこの記事が、改めて多くの方々の目に触れる機会を得た。池内氏には、厚く御礼申し上げたい。これを切っ掛けに、見識ある方々の間において、チュニジアの事件の実行組織に関する再検討につながることを願っている。


※2015年11月18日追記

池内恵氏のForesightの連載「中東通信」に下のような追記がなされていた。チュニジアのバルドー博物館のテロについての記事へのリンクについては、単なる誤りだったようだ。
それでも、改めて「非常に興味深い」とのご感想とともに、示唆に富むコメントまでいただいた。
真摯なご対応に感激したところ、あらためて感謝申し上げたい。

池内氏に当ブログをご覧いただいているというだけで、大変光栄である。

(以下、該当部分の引用)

【11月17日追記:誤って、このリンクはこの匿名ブログが過去にチュニジアのバルドー博物館のテロについて記した記事へ繋いでしまっていた。
ここに「ご立腹」の記事へのリンクを改めて紹介する。チュニジアの旧記事自体は、非常に興味深いものであり、今も真相について大きな謎が残ることを示す。また、「イスラーム国」を名乗る集団が現れてもそれを便乗犯の宣伝として無視するチュニジア政府の基本姿勢が、現状では功を奏していると見ることもできるなど、関連して検討する価値がある要素を多く含む。通常の報道からは得られない貴重な視点と、解かれるべき「謎」を示してくれた得がたい記事であったため、私自身ふと思い出して読んでいた。ただし、筆者は匿名分析者のように、「イスラーム国」を名乗るアカウントがバルドー博物館事件を自らの犯行だと宣伝したとしても、その証拠を明確に示したり、その後も継続的に「イスラーム国」としての活動を行っていけなければ、チュニジアにも「イスラーム国」が現れたと言い切っていいのかというと躊躇する。ただしそのような便乗犯に近い存在を含めた現象が「イスラーム国」であるという考え方は成り立つ。それこそがイラクとシリアに限定されないグローバルなネットワークとしての「イスラーム国」の末端のあり方である。参考としてここにリンクを残しておく】。