2015年11月20日に発生したマリのホテル襲撃の実行組織について、NHKは次のとおり報じている

 
(前半略)・・・襲撃のあと、国際テロ組織「アルカイダ」とつながりのある武装組織「ムラビトゥン」がツイッターで犯行を認め、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは日本時間の21日朝早く、この組織のメンバーとされる男の声で「欧米諸国が預言者ムハンマドを侮辱したことなどへの報復だ」と犯行を認める声明を放送しました。
 この組織は、おととし隣国アルジェリアの天然ガス施設を襲撃して日本人10人を含む40人を殺害する事件を引き起こしたグループの指導者、ベルモフタール容疑者が立ち上げた組織ですが、詳しい実態は明らかになっていません。

※アルジャジーラが報じたムラービトゥーンの声明はこちら

当ブログ管理人は、2015年5月に公表された「ムラービトゥーン」の指導者であるアドナン・アブルワリド・サハラーウィの声明から、北アフリカを活動領域とするジハード主義組織「ムラービトゥーン」は、アブバクル・バグダディに忠誠を誓い、イスラム国の傘下に入ったと考えていた。

↑サハラーウィ指導者による忠誠の声明(※ルーマニア人の人質に関する警告も含まれている)

ところが、マリのホテル襲撃に関し、アルジャジーラが報じた音声のみの声明によると、ムラービトゥーンはイスラム・マグリブ諸国のアルカイダ(AQIM)と共同で今回の作戦を行ったとしている。周知のとおり、イスラム国はアルカイダと敵対関係にあり、ムラービトゥーンがイスラム国傘下の組織だとするなら、共同での作戦実施は考えられない。

他方、2015年の7月にムラービトゥーンから次のような声明も出ていた。ムラービトゥーンはアルカイダ系組織であり、イスラム国とは関係がなく、モフタール・ベルモフタール(ハーリド・アブルアッバス)が指導者であるとしている。
ムラービトゥーンの声明

これらの情報に鑑みるに、ムラービトゥーンの組織内において路線対立があり、イスラム国派のアドナン・アブルワリド・サハラーウィ(旧「西アフリカ統一ジハード運動(MUJAO)」指導者)と、アルカイダ派のモフタール・ベルモフタール(旧「覆面旅団」の指導者)が主導権争いをしているのではないか、と推測される。

その上で、今回のマリのホテル襲撃は、ベルモフタール率いる「アルカイダ派」のムラービトゥーンが行ったものと考えられるのではないか。