国際テロ情報収集ユニットのみなさん
外務省内に「国際テロ情報収集ユニット」が発足し、警察も同様にネット上の動画や声明などの収集に漸く重い腰を上げた。ところで、NHKの関連報道でいささか気になる点があったので、該当部分を以下引用する。

・・・(※河野国家公安委員長は)過激派組織IS=イスラミックステートなどによる国内でのテロの危険性について、「危険性はあると思っていて、国内でも、ISと連絡を取っていると公言している人物やISに忠誠を誓っていると思われる人物が存在している。警察もしっかりとモニタリングをしているので、テロにつながらないよう厳しく取り組んでいきたい」と述べました。

・・・(※日本)国内でも、大学生がISに戦闘員として加わるためにシリアへの渡航を計画していたほか、インターネット上でISを支持する内容や、ISの関係者を名乗る人物とやり取りをしている書き込みが相次いで見つかっています。・・・

・・・警察庁は、インターネット上でテロに関する情報を自動監視するシステムの整備・・・(※中略)など、テロを未然に防ぐ対策の強化を急いでいます。

こうした報道を見る限り、どうも日本の警察及び外交当局は、「イスラム国の公式ホームページ」だとか、「イスラム国公式のSNSアカウント」のようなものが存在し、それをモニタリングしていれば事足りると気楽に考えているような節があるが、そういうものは存在しない。

(ちなみに、2014年の中ごろまでは、イスラム国公式の広報部門である「フルカーン・メディア」や、「ハヤート・メディア」の公式ツイッター・アカウントなるものが存在した。カリフ就任宣言の動画が公表された頃には、すべてのアカウントがツイッター事務局により凍結されてしまった。)

「それなら、公式でなくても、イスラム国の構成員が運営しているSNSアカウントを監視すればよい」とでも考えているのかもしれない。しかし、そういうものも存在しない。存在するのは、イスラム国の支持者たちが運営するアカウントである。そうした無数のアカウント運営者の一部の者たちが、どこからか新たな声明や動画を入手すると、それをファイル共有サイト等にアップしてURLを拡散させることで、イスラム国の広報活動の一端を担っている。そうした状況を、まずは理解しなくてはならない。

以上の根拠として、イスラム国から発出された2015年9月26日付の回章第94号を、次に示しておくことにする。新組織の新米分析官の諸氏にとっては参考になるだろう。関係の在外公館にも転電することをお勧めする。


イスラム国SNS規制

この回章のとおり、イスラム国の構成員は、幹部であろうと末端の戦闘員であろうと、インターネットを利用して、イスラム国の名で如何なる広報活動を行うことも禁止されている。勝手に外国メディア等の取材に応じることも許されない。また、イスラム国に所属する者が、SNSアカウントを開くこと自体が禁止されている。こうした規則への違反が発覚すれば、処罰されることが明記されている。

当該回章の内容が徹底して遵守されていることを保証するものではなく、違反者はいるかもしれない。だが、ネット上で「イスラム国の関係者」を名乗る人物については、まず間違いなく偽物だと考えるのが自然であろう。