フリージャーナリストの安田純平氏が2015年6月にシリアに入国した後、行方不明となっている件で、国際団体「国境なき記者団」から日本政府に対して救出を訴える声明が出された。

NHKの報道によると、安田純平氏は現地でスパイ容疑をかけられ、アルカイダ系のジハード主義組織「ヌスラ戦線」に拘束されたとしている。

安田純平氏が何らかのスパイ活動を行っていたとは常識的に考えられず、容疑が晴れれば「捕虜」として扱われるのではないかと見られる。一方、ヌスラ戦線のジュラーニ指導者は、公式の広報部門が最近公開した記者会見の動画で、捕虜を丁重に扱うことは、聖典クルアーンにも記されたイスラム法上の義務である旨を強調している。

上の動画は、レバノン政府軍兵士の捕虜解放交渉に関する記者からの質問に対し、ヌスラ戦線のジュラーニ指導者からの返答である。当ブログ管理人が字幕を付しておいたが、字幕では字数的な制約があるので、詳細な翻訳は次のとおりである。

・・・捕虜を丁重に扱うことについては、我々ヌスラ戦線として、それはイスラム法上の義務であると捉えている。偉大なアラーはこう言われた。「アラーを敬う者は、貧者と孤児と捕虜に食物を与えるものだ」と。アラーは、貧者、孤児及び捕虜を平等に扱われるのだ。悪の支配者たちのように捕虜を拷問するのではなく、憐憫の情をもって接しなくてはならない。
我々はイスラム法に則り、正しく捕虜を扱っている。そのことについて、誰からも見返りや感謝を求めてさえいない。聖典クルアーンには「アラーが喜べば十分であって、見返りも感謝も不要である」とも記されている。つまり、我々はアラーの教えに従って正しく捕虜を扱っているに過ぎない・・・
 
安田純平氏の拘束に関する国境なき記者団からの声明によれば、身代金の支払い期限が迫っており、支払いがなければ処刑または他の「テロリスト」グループに売り渡されるおそれがあるとしている。

しかし、ジュラーニ指導者の発言や、レバノン政府軍兵士をはじめ、その他の外国人の捕虜解放交渉を見る限り、ヌスラ戦線がイスラム国のように殺害の脅迫を行う可能性は低いのではないだろうか。

なお、ヌスラ戦線に拘束された外国人の「捕虜」については、これまで解放されたケースが多数ある。邦人保護を担当する関係機関の、安田純平氏の無事解放に向けた取り組みに期待したい。