2013年1月、アルジェリア南東部・イナメナスのガス生産施設がジハード主義組織「血盟団」に襲撃され、日本人らが人質となる事件が発生した。この事件で、プラント建設大手「日揮」の従業員ら日本人10人を含む計17人のスタッフが殺害された。

事件から3年が経過する中、モフタール・ベルモフタール(ハーリド・アブルアッバス)率いる「血盟団」は、「ムラービトゥーン」という組織に代わり、その後「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の傘下組織となった。

そして、2016年3月18日、AQIMはアルジェリア南部インサラーのガス生産施設に対するロケット砲撃を行った。以下は、「イギリスのBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)社及びノルウェーのスタットオイル社の基地を標的」と題するAQIMが発した攻撃に関する声明文である。声明で、AQIMは日本人が人質となった3年前の事件(ティガントリン事件)に言及しつつ、アルジェリア当局が今なお、収奪的な多国籍企業と利益を共にするフランスや西側諸国の圧力に従属していることは明らかだとしている。

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声明では、シェールガス開発による環境破壊を懸念するインサラーの住民の権利が無視され、アルジェリア当局は西側諸国企業の顔色を窺って抗議デモを弾圧したとして、AQIMは3年前にも標的としたBP社及びスタットオイル社が運営している石油施設を標的に選んだとしている。また、今後もシェールガス開発に関わる全ての西側諸国企業を直接の標的とすると宣言している。

「日揮」は、BP社のサブコントラクターとして、アルジェリアの資源開発に関わってきており、その結果3年前の事件に巻き込まれた経緯がある。今もこうした脅威は続いていることを示す重要な声明であるが、日本国内では全く報道されず、完全に無視されているのが現状である。

声明がアラビア語のため、注目されなかったのかもしれないが、アルカイダ系組織の声明を英語で配信している「グローバル・イスラミック・メディア・フロント」から英訳版も公表された。だが、それでも何らメディアで取り上げられる兆候がない。未だブログ更新を本格的に再開できる状況にないのだが、せめてここに記しておかねば、完全に風化してしまうだろう。

事件を起こした当の組織が3年前の事件に言及しながら、再び石油施設攻撃を行ったというのに、日本国内の誰一人として知らないようでは、亡くなった日揮の従業員の方々が浮かばれまい。日本人の安全保障に対する意識はこの程度なのか。痛ましい事件を教訓とすることもできず、遠い世界の出来事として忘却するだけとは、真に残念である。

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