シリア北部のマンビジでは、欧米諸国などでつくる有志連合の支援を受けたクルド人勢力とイスラム国の間で激しい戦闘が繰り広げられている。

2016年7月4日、イスラム国系メディアの「アマーク通信」は「クルド人民防衛隊(YPG)」の幹部「ファイサル・アブ・ライラ」の兄弟で、同じく幹部の「ユーセフ・アブド・サアドゥン」というクルド人を捕虜として拘束したとする動画を公開した。

この動画に登場するアブド・サアドゥン氏の発言によると、アブ・ライラ氏は戦闘中に頭部を負傷し、米軍によってスレイマニヤの病院へ搬送されたものの、3日後に死亡したとしている。また、10日もあれば、イスラム国をマンビジから撤退させられると考えていたが、多数の死傷者を出すなど、予想外の苦戦を強いられていると明かしている。


↓アブ・ライラの墓前に座して祈るアブド・サアドゥン氏
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さらにアマーク通信は、7月5日付配信記事で、捕虜となったアブド・サアドゥンの自供として、トルコ政府とクルド人勢力の間の密約を暴露した。すなわち、クルド人勢力がトルコ領内のヌサイビン(シリアの都市カーミシュリの北方)などから撤退する見返りとして、イスラム国の支配下にあるシリア北部のマンビジを制圧することを認められたとしている。

最近、シリア北部のクルド人部隊が欧米の支援を受けて、イスラム国の支配地域に対する大規模な攻撃を仕掛け、勢力範囲の拡大を目論んでいるのに対し、クルド人勢力を宿敵と見なすトルコが沈黙しているのは何とも奇妙であった。しかし、このアマーク通信の報道のとおり、トルコ領内からのクルド人部隊の撤退を条件とした取引であったとするならば、まさに合点がいく。外部の者には非常に分かりにくいシリアでの仁義なき合従連衡は、今日も繰り広げられている。