naba40
2016年7月26日に配信された、イスラム国のアラビア語広報紙「アルナバ」の第40号(毎週火曜日発行)に、イラクでの戦闘中に死亡した最高幹部の一人、ウマル・シシャニの遺言が掲載された。グルジア語で記された遺言を、イスラム国の公式広報部門「アルハヤト・メディア・センター」がアラビア語に翻訳したものと記されている(画像をクリックすると「アルナバ」のPDFファイルを閲覧可能)。

死亡した幹部の遺言が公表されるのは異例である。モスル南部のシルカートにおける戦闘で死亡したとされるシシャニ氏には、重傷を負った後に死を覚悟する時間があったのかもしれない。遺言では、血縁や地縁といった出自ではなく、アラーへの畏怖と責任感による人材登用を訴えたり、バグダディ指導者にムハージル(外国からイスラム国への移住者)への配慮を願うなど、非アラブ系の大幹部らしい内容である。

故ウマル・シシャニ幹部の遺言と、その和訳は次のとおり。なお、『アルナバ』のバックナンバー全号リンクはこちらから

↓ウマル・シシャニ幹部の遺言(アルナバ40号15ページ)
 Naba_40_P0015

・第一の遺言
私の指揮下にあったジハード戦士たちへ。諸君らにかけた迷惑について許してほしい。私の方からは、諸君らに対して全てのことを許した。アラーに許しをを求め、懺悔するように。

・第二の遺言
移住とジハードをあきらめてはならぬ。この2つの中にこそ、諸君らの魂の救済はある。勝利は我らの宗教にあるだろう。

・第三の遺言
アミール(幹部)たちへ伝えてほしい。諸君らは腹心や側近を、出自に基づいて任命しているようだが、どうかアラーへの畏怖と責任感の強さに基づいて任命してほしい。

・第四の遺言
現世や金銭に執着してはならぬ。最後の審判の日には、諸君らが手にしていた金銭について問われることを忘れるな。次のハディースを思い出せ。預言者は仰られた、「お前たちが正しくアラーにおすがりさえすれば、鳥に餌を与えるかの如く、お前たちにも恵みを与えられる」と。現世で金銭を追い求めて、時間を無駄にしてはならぬ。

・第五の遺言
信徒たちの長(※バグダディ指導者)へ。
貴方にアラーのご加護を。飢えに苦しみ散り散りに暮らしている か弱い信徒たちが貴方の下に集えるように、アラーが貴方の命を長らえてくださいますように。貴方の手によって、二聖モスク(※メッカとメディナ)と聖なる家(※エルサレム)が征服されますように。信徒たちの長よ、私が貴方の命令に従わなかった、あるいは命令を果たせなかったことがあったなら、どうかお許しください。あなたのお墨付きをいただけないことに、私が金銭を費やしてしまったとしたなら、どうかお許しください。私の判断のみで行ったことは、さほど多くはないと願っています。
信徒たちの長よ、あなたが正しくあり続け、アラーとともにいる限り、ムハージル(※イスラム国への移住者)たちは、あなたの下に留まるでしょう。くれぐれもムハージルたちのことを、よろしくお願いします。そして、信徒たちの長に最後のお願いです。どうか、カフカースの同志たちのことをお忘れにならないでください。

※2016年7月29日追記
イスラム国キルクーク県広報部から、故ウマル・シシャニの遺言がジハード戦士たちに配布されている様子の写真3枚が配信された。
↓クリックして画像を拡大
1
4
5