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2016年11月3日午前8時(日本時間)ごろ、イスラム国のバグダディ指導者による声明が発せられた。『これぞアラーとその使徒が我らと交わした約束』と題する声明について、NHKは次のとおり報じているが、賢明な当ブログの読者の方々はどう思われるだろうか。

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11月3日 14時27分
過激派組織IS=イスラミックステートのイラクでの最大の拠点であるモスルの奪還作戦が進む中、ISは指導者のバグダディ容疑者のものだとする声明を公開し、みずからの戦闘員に対して徹底抗戦を呼びかけました。
過激派組織IS=イスラミックステートは2日、指導者のバグダディ容疑者のものだとする音声の声明をインターネット上に公開しました。

声明は30分余りの長さで、ISが支配するイラク第2の都市モスルやその周辺で戦っているみずからの戦闘員に対して、「土地を守ることは撤退して恥をかくことより、1000倍簡単だ。敵の血を川のように流してやれ」と述べ、徹底抗戦を呼びかけています。

モスルの奪還作戦をめぐっては、イラク軍が周辺の町や村を制圧したあと、今月1日にはモスル市内に部隊を進め、ISへの攻撃を強めています。ISとしてはイラクでの最大の拠点であるモスルを守るため、指導者の声明を出して戦闘員の士気を高める狙いがあると見られます。
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「土地を守ることは撤退して恥をかくことより、1000倍簡単だ」とは、十字軍連合の支援を受けるイラク政府軍やクルド人部隊の大軍勢と命を賭けて戦っているジハード戦士たちに対する物言いとしては、あまり相応しいとは感じられない。彼らの戦いは決して簡単なものとは言えず、発言は何とも他人事のようである。これで「戦闘員の士気を高める」ことができるのだろうか。本当にバグダディ指導者が、このようなことを言ったのだろうか。

実際に声明を聴いてみると、バグダディ師は次のように仰られている。

واعلموا أن ثمن بقائكم في أرضكم بعزكم, أهون بألف مرة من ثمن انسحابكم عنها بذلكم  
「名誉を以て諸君らが土地に留まることの代償は、不名誉を以てそこから撤退することの代償よりも、1000倍安いことを知りなさい」

ジハード戦士たちが支配している土地を守りぬくことによって払わねばならない代償(艱難辛苦)は確かに辛いものであるが、あきらめて撤退することの代償(アラーによる報い)と比較すれば、遥かに軽いものだと教えてくださっているのである。これは、バグダディ師個人の勝手な考えではない。続いてバグダディ師は、聖典クルアーンから次の一節を引用する。

 قُل لَّن يَنفَعَكُمُ الْفِرَارُ إِن فَرَرْتُم مِّنَ الْمَوْتِ أَوِ الْقَتْلِ وَإِذاً لَّا تُمَتَّعُونَ إِلَّا قَلِيلاً
『言ってやれ、「逃亡して死を免れても、つかの間の安楽以外に、お前たちの利益になることはないのだ」と』

また、バグダディ指導者は「敵の血を川のように流してやれ」と述べたとされるが、文脈的にはかなり唐突な印象を受ける。実際の声明では、この部分は声明の別の箇所で、土地を守るジハード戦士に対してではなく、殉教攻撃を行うジハード戦士に向けた呼びかけとして収録されている。NHKの報道は、文脈の異なる箇所の発言を強引につなげたものである。

NHKがイスラム国寄りの報道をする必要は全くないが、恣意的な翻訳や編集により、視聴者が聞いて奇異に感じるような印象操作を行うのはいかがなものか。公共放送として、公正な報道をお願いしたいものである。

↓画像をクリックして声明の音声ファイルをダウンロード↓
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