モスル南東サラーム病院のイラク軍部隊が壊滅

米軍の支援を受けるイラク軍によるモスル解放作戦の開始から、まもなく丸2カ月を迎えようとしているが、イラク軍の大部隊はイスラム国(IS)のジハード戦士の抵抗の前に苦戦を強いられている。12月7日にはモスル南東部のサラーム病院に駐留していたイラク軍の部隊が、イスラム国側の連続殉教攻撃などによってほぼ壊滅するという大打撃を被っており、大破したイラク軍の車両多数が無残な姿をさらしている映像が、イスラム国メディアの「アマク通信」によって配信されている。

ポリティカル・コレクトネスへの配慮からか、イスラム国に有利な内容のニュースは、たとえ事実であろうとも一般のメディアでは一切報じられない。そんな中、イスラエルの軍事・諜報情報サイト「デブカ・ファイル(DEBKAfile)」は、『モスル攻撃の失敗、対応はトランプ次期政権へ持ち越し』と題する興味深い記事を配信した。記事によると、イスラム国の幹部たちは、ラッカ・モスル間を何の支障もなく移動できるほか、総勢6万近いイラク・米連合軍には、わずか9千人のジハード戦士を打ち負かす能力さえないとしている。

デブカファイルの記事の当ブログ管理人による和訳は以下のとおり。

 アメリカ軍の支援を受けるイラク軍が、モスル解放作戦を始めてから9週間が経過し、最早その失敗は否定できないだろう。12月4日、イスラム国の幹部たちの一団は、シリアのラッカから移動して何の支障もなくモスルを訪れていた。

 軍事・諜報筋の「デブカ・ファイル」への報告によると、イスラム国の幹部たちがラッカからモスルを訪れたのは、モスルを支配している幹部たちが、町から撤退せずに留まることに方針を転換したのを踏まえ、ラッカとモスルという二つの拠点における作戦を、どのように並行して展開させていくかについて協議することが目的であった。

 イスラム国が方針を改めたのは、イラク軍とこれを支援するアメリカ軍にはモスルを奪回する能力がないと見ているためだ。オバマ大統領はモスル現地のアメリカ軍幹部らに対して、12月末までにモスルを奪回せよとの指示を出していたが、それが果たされそうにないことは、アメリカ政府内でも明らかになっている。オバマ大統領は、在任中にモスルを奪回できないまま、ホワイトハウスを去ることになるだろう。

 10月から始まったモスル解放作戦では、戦闘機90機と大砲150門の支援を受けながら、5万4千人のイラク軍兵士と5千人の米軍兵士が投入された。ところが、たった9千人のジハード戦士を打ち負かすことができない体たらくである。

 イラク軍が制圧できたのは、当初想定されていた地区のわずか10分の1に過ぎない。作戦が進まないため、当初の意気込みは削がれ、部隊の士気は下がってしまった。イラク政府は戦果を誇張し、新たな戦線を開いたなどと吹聴しているが、実際のところイラク軍は足踏み状態にあり、イスラム国の戦闘員と単に撃ち合いをしているだけである。

 イスラム国が戦術を転換して、イラク軍と徹底抗戦することに決めたという兆候は、ジハード戦士たちによって巧妙に制作され11月27日に配信された動画でも窺うことができる。この動画は、イスラム国によるモスル防衛の様子に関するもので、臨戦態勢にある戦闘員たちや狙撃手の配置ぶり、重要地点における自動車爆弾の存在、バリケードを張り巡らした市街などが公開されている。なお、イスラム国が撤退した地区では、有毒な化学物質を含んだ砲弾類がわざと残されており、「こうした武器で攻撃される危険を承知で来てみろ」という警告をイラク軍に送っている。

 また、デブカファイルの情報源によると、イラク軍によるモスル奪回作戦の初期に、イスラム国の戦闘員たちの中にはモスルを脱出した者たちもいたが、彼らは行政部門の責任者たちとともにモスルに戻ってきているという。

 一方、クルド自治政府の治安部隊「ペシュメルガ」は既に3週間前に、モスル奪回作戦から引き揚げており、イスラム国という危険な隣人と共存せざるを得ないということを認識している。アルビルを始めとするクルド人自治区の都市を守るために、モスルに対する強力な防衛線を築くことにエネルギーを注いでいる。

 モスル戦線の危機的な状況を踏まえ、アメリカ国防省は膠着した戦況を打開するために、部隊の増派計画を策定した。この計画は、次期政権のトランプ大統領とマティス国防長官による了承が待たれている。