アルカイダから分離した「シリア征服戦線」は、他の反政府勢力と合併して「シリア解放機構」という組織になったが、この新たな組織の司令官は、「シリア征服戦線」の指導者であったアブムハンマド・ジュラニ師ではなく、「アハラール・シャーム運動」の元司令官であったハーシム・シェイク師であった(なお、「アハラール・シャーム運動」は「シリア解放機構」に合流しなかった)。

2017年2月27日に公開された上のYoutube動画では、25日にシリア中部のホムスでアサド政権の情報機関に対しておこなわれたシリア解放機構による攻撃作戦について、ジュラニ師が「軍事総司令官」との肩書で声明を発表している。新組織の設立後も、ジュラニ師が健在であり、軍事面で重責を担っていることが明らかになった。

毎日新聞時事通信日本テレビなど、日本の複数のメディアが「シリア解放機構」との訳語を使用している。この訳語を日本で最初に使ったのは当ブログ管理人である(「シリア解放機構」のGoogle検索の結果は、3月1日現在では当ブログの記事がトップである)。

一方、ホムスでのアサド政権の情報機関に対する攻撃作戦について、NHKの報道は次のとおりである。この報道では、「シリア解放機構」といった固有名詞を使わず、「アルカイダ系の武装組織」などとしているが、正しい報道とは言えないだろう。今なおアルカイダとの繋がりが払拭されていないと見なすとしても、「アルカイダから分離したと主張する組織」との表現が適切ではないだろうか)。

 シリアの内戦終結を目指す和平協議が行われるなか、シリア西部で政府の情報機関を狙った爆弾テロが発生して、これまでに少なくとも42人が死亡し、協議を仲介する国連特使は「和平協議の妨害を図ったものだ」と非難しました。
 シリア西部のホムスで25日、政府の情報機関など2か所で爆弾テロが相次ぎ、内戦の情報を集めている「シリア人権監視団」によりますと、これまでに情報機関の幹部を含む少なくとも42人が死亡しました。
 (中略)また、アルカイダ系の武装組織が犯行声明を出しましたが、これについて、和平協議でアサド政権の代表を務めるジャファリ国連大使はスイスで記者団に対し、「ただでは済まさない」と述べ、対抗策をとる考えを表明しました。
 (中略)このアルカイダ系組織は、停戦合意の対象に入っておらず、今回の協議にも参加していませんが、アサド政権が報復として軍事行動を強め、戦闘地域が広がることも予想され、和平協議への影響が懸念されています。


※参考動画:シリア解放機構のハシム・シェイク(アブジャベル・シェイク)指導者によるシリア解放機構の設立に関する声明動画