20170312_Tahrir_al-Sham_Damascus_Attack_Arabic

アルカイダから離脱した「シリア征服戦線」が、アサド政権の打倒を目指す他の多くの反政府勢力と統合して「シリア解放機構」という新組織が設立されたことについては、日本ではほとんど何の関心も向けられていない。無論、一般市民はそれでもかまわないが、わが国の公共放送であるNHKまでもが、事態の推移を一切無視した内容の記事を堂々と配信してよいのだろうか。先日、シリア解放機構がダマスカスで行った攻撃作戦について、NHKは「アルカイダ系の武装組織『シリア征服戦線』」が犯行声明を出したなどと報じた。

以下、NHKの報道より引用
"シリア 40人死亡の爆弾テロ アルカイダ系組織が犯行声明(3月13日 5時02分)
シリアの首都ダマスカスで起きた、少なくとも40人が死亡した爆弾テロ事件について、アルカイダ系の武装組織が犯行を主張する声明を出し、アサド政権が戦闘を優位に進める中、今後、劣勢に立たされた過激派組織が存在感を誇示しようと、都市部でのテロを活発化させるおそれがあります。
シリアの首都ダマスカスの中心部で、11日、路上に仕掛けられた爆弾と何者かが体に巻き付けた爆発物が連続して爆発し、シリア内務省によりますと、巡礼に訪れた外国人など少なくとも40人が死亡し、120人がけがをしました。
これについて、かつて「ヌスラ戦線」と名乗っていたアルカイダ系の武装組織「シリア征服戦線」が12日、インターネット上に声明を出し、アサド政権を支えるイランと、イスラム教シーア派の民兵組織に対する警告のために行ったと主張しています。(以下略)"

NHKは、この「犯行声明」の内容を確認したのだろうか。「シリア解放機構」の設立と、その後の展開について知らなかったとしても、声明の冒頭の組織名とロゴを見たら、情勢に何らかの変化があったことに気づくはずである。おそらくは、所詮「テロ組織」が出した声明なので、ウラ取りや内容の確認などは不要という認識だとしたら残念である。相手が悪者なら偽ニュースを流してもかまわないという態度では、気に入らない指導者を偽ニュースでこき下ろそうとする、某国のメディアと同じレベルである。
以下が、今回のダマスカスでの攻撃作戦に関するシリア解放機構からの公式声明である。
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また、「シリア征服戦線」にせよ、「シリア解放機構」にせよ、アルカイダからの分離を主張していることについて、NHKはどう考えているのだろうか。「アルカイダ系の武装組織」と断定的に報じる以上は、何らかの具体的根拠が必要である。「シリア解放機構」が、いまだにアルカイダと結びつきを有していることを示す証拠があるなら、世界中の情報機関が求めている情報である。極めて興味深いので、ぜひとも開示していただきたい。