コーカサス地方を拠点とするジハード主義組織「カフカス首長国」の指導者「アブムハンマド・ダゲスターニ」が、ロシア治安当局との戦闘により殺害された。
アブムハンマド・ダゲスターニ

「カフカス首長国」からも公式の声明が発出され、ダゲスターニ指導者の死亡を認めている。
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カフカース首長国の首長死亡に関する声明


カフカス首長国を率いるダゲスターニ指導者は2015年1月、「信徒たちの長」「カリフ・イブラヒム」ことイスラム国のアブバクル・バグダディ指導者を激しく非難する声明を発していた。
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このダゲスターニ氏のアラビア語での声明によると、バグダディ指導者は、アルカイダ本部のザワヒリ指導者の指示に従わず、シリアで拡大した支配領域を勝手に「イラクとシリアのイスラム国」として併合し、シリアのアサド政権の打倒を目指すアルカイダ系のヌスラ戦線と衝突したと非難している。さらに、スンニ派ウラマーの了解も事前に得ないまま、一方的に「カリフ」就任を宣言したと述べるなど、バグダディ指導者がカリフの地位にあることを全く認めていない。「バグダディよ、おまえが全ムスリムを率いるカリフだというなら、ロシアと戦う我らにジハード戦士の援軍を一人でも送ってみせよ」と怒りをぶつけている。さらに、カフカース首長国からの指示に従わず、バグダディに対し忠誠を誓うチェチェン系のジハード戦士たちについては、その無知と浅はかさを嘆いている。

このように、カフカース首長国はアルカイダ本部のアイマン・ザワヒリ指導者との連携を重視しており、イスラム国とは激しい対立関係にあることは自明である。

ところが、日本においては、ジハード主義組織に関するこうした基本情報さえ全く知られていない。わが国の公共放送局でさえ、ロシア治安当局の発表を垂れ流しで報じているだけであり、ジハード主義組織に関するリテラシーの欠如を示している。専ら報道機関の問題というよりは、こうしたテーマについて適切な助言が出来る専門家が皆無ということであり、当該分野におけるわが国専門家のレベルの現状を如実に物語っている。

NHK 「ロシア南部 イスラム過激派リーダーら殺害」
(4月20日 23時09分)
ロシア南部で、治安部隊がイスラム過激派の活動拠点を包囲してリーダーらを殺害し、過激派組織IS=イスラミックステートとの関係についても調べているものとみられます。
ロシアのメディアによりますと、南部のダゲスタン共和国で19日、治安部隊がイスラム過激派の活動拠点とされる住宅を包囲して銃撃戦となり、過激派のメンバー5人を殺害したということです。
この中には、首都モスクワなどで爆弾テロを起こしてきた、ロシア南部を拠点とするイスラム過激派組織「カフカス首長国」のリーダー、ケベコフ容疑者(※ダゲスターニ指導者のロシア名)も含まれていたと伝えています。
ロシア連邦保安庁によりますと、南部のダゲスタンやチェチェンなどからおよそ1700人がシリアやイラクへ入国してISに加わったとみられ、「カフカス首長国」のリーダーらもISに忠誠を誓っていたということです。
治安当局は、ISに加わった人たちがロシアに帰国してテロを行うおそれがあるとして警戒を強めており、殺害されたメンバーとISとの関係についても調べているものとみられます。

※追記
なお、「カフカース首長国」の故アブムハンマド・ダゲスターニ指導者については、以下の動画が極めて重要であるところ、以下リンクを挙げておく。

この動画でダゲスターニ指導者は、「ヌスラ戦線」、「イスラム国」及び「アルカイダ本部」の間で交わされた「シャーム地方(シリア)」をめぐるやりとりを詳細に証言しており、それぞれの組織の相関関係や立場を明らかにしている。また、イスラム国の最高幹部の一人である「オマル・シシャーニ」が、自分の意に反してイスラム国側に就いたことを非難しており、同じチェチェン系ジハード戦士でありながらライバル関係にあることをうかがわせる。