2016年7月29日(日本時間)、Orient Newsはヌスラ戦線の指導者アブ・ムハンマド・ジュラニ氏(「ジャウラニ」「ゴラニ」などの表記もあり)の動画を配信した。ジュラニ氏は動画に素顔を晒して登場し、アルカイダからの分離と、新組織「ファトフ・シャーム戦線」(ファタハ・シャーム戦線との表記もあり)の設立を宣言した。
 
 ジュラニ氏はこの動画で、アルカイダのザワヒリ師と副官のアフマド・ハサン・アブ・カイル氏が、シリア国民のジハードと革命を優先する姿勢を示したことに謝意を表し、高く評価している。
 そして、アメリカとロシアが率いる国際社会が、アルカイダ系のヌスラ戦線を攻撃するとしながら一般のイスラム教徒を攻撃しており、こうした口実を与えないためにも、ヌスラ戦線としての一切の活動を放棄し、「ファトフ・シャーム戦線」という新たな組織として活動すると宣言した。また、「ファトフ・シャーム戦線」は国外の如何なる方面とも何ら関係を有さないと述べ、アルカイダから分離したことを明言した。
 新たな組織の目的は、(1)シャリーア(イスラム法)による統治、(2)ジハード戦士たちを統合し、シリアを暴君の支配から解放する、(3)イスラム法に則りあらゆる手段でシリアでのジハードを堅持、(4)イスラム教徒の困難の緩和、(5)治安を回復して民衆に尊厳ある生活を保証することだとしている。

※2016年7月29日追記
NHKが本件について報じた。これまでの動きや関連情報にも触れながら、よくまとまっている。しかし、「ジュラニ容疑者」という表現は、いかがなものか。テロ組織として扱われているとはいえ、具体的にどんな容疑があるのか不明である。
また、多くの日本の報道機関は、一定期間が経過すると記事を削除してしまうので、こういう良質な記事をアーカイブとして利用できないのは真に残念である。公共の利益のため、ここに転載しておく。

7月29日 7時53分
 内戦が続くシリアで、アサド政権と激しい戦闘を続ける国際テロ組織、アルカイダ系の武装組織、「ヌスラ戦線」の指導者が、アルカイダとの関係を解消すると発表し、内戦の構図にどのように影響を与えるかが注目されています。
 シリアで活動するアルカイダ系の武装組織、「ヌスラ戦線」の指導者、アブムハンマド・ジュラニ容疑者は28日、シリアの反政府系のテレビ局を通じて声明を発表し、アルカイダとの関係を解消すると宣言したうえで、組織名を「シリアの解放」を意味する「ファトフ・シャーム戦線」に変えることを発表しました。
ヌスラ戦線はアサド政権の打倒を掲げ、ほかの反政府勢力とも連携して政府軍との戦闘を続けてきたほか、ライバル関係にある過激派組織IS=イスラミックステートとも衝突を繰り返してきました。
アメリカからはアルカイダ系であることをなどを理由にテロ組織に指定され、アメリカ主導の有志連合やロシア軍の空爆の対象となってきたため、テロ組織との関わりはないとアピールし、勢力の維持を図るねらいがあるとみられます。
一方、今回の発表に先立って、アルカイダ側も声明を出して関係の解消を容認する姿勢を示しており、ヌスラ戦線とアルカイダの関係解消が、シリア内戦の構図にどのような影響を与えるかが注目されています。
 
ヌスラ戦線とは
「ヌスラ戦線」は、内戦が続くシリアを拠点に活動するイスラム過激派組織で、シリア各地でアサド政権との間で戦闘を続けています。
2011年に結成され、おととし、アルカイダの指導者、ザワヒリ容疑者に忠誠を誓ったあと、過激派組織IS=イスラミックステートと対立を深めました。
シリア国内では北西部のイドリブなどでほかの反政府勢力と協力し、シリアの政府軍との戦闘を続けてきたほか、ライバル関係にあるISとの衝突も繰り返してきました。
アメリカ政府からテロ組織に指定され、ISとともに有志連合による空爆を受けているほか、ロシア軍も空爆の対象としています。こうしたなか、ヌスラ戦線は各地の拠点を失うなどして戦力が弱体化し、追い詰められているとも伝えられていました。
一方、ヌスラ戦線は去年6月に取材のためシリアに入ったあと、行方が分からなくなっている日本人フリージャーナリストの安田純平さんを拘束しているとみられていますが、ヌスラ戦線自身はこれまで、安田さんの拘束について具体的な情報を出していません。

米は軍事作戦を継続
「ヌスラ戦線」をテロ組織として指定しているアメリカ、ホワイトハウスのアーネスト報道官は28日の記者会見で、ヌスラ戦線が国際テロ組織アルカイダとの関係を解消すると発表したことについて、「アメリカはヌスラ戦線が欧米などへの攻撃を行う意図を持ち続けていると分析している」と述べ、ヌスラ戦線はテロ組織だとするこれまでの認識に変わりはなく、引き続き軍事作戦の対象になると強調しました。